2008年に生まれた「まめなり」はwebサイトデザイン・制作を中心に事業を広げ、多くのお客様のページを彩ってきました。現在に続く「まめなり」のスピリッツはどのように培われたのか、そして今後どのように発展していくのか、社長・上澤進介が語ります。
インタビュー・文 / 丘村奈央子(エディラボ)
——創業して10年になりました。
「まめなり」は、主に口コミやご紹介で新しい仕事をいただいてきました。うちは特別に激安でもない、驚異的な早さがあるわけでもない。それでも10年続けて来られたのは、皆さんが「まめなり」が生み出す雰囲気や仕事を信頼してくださったおかげだと思っています。
——「まめなり」はどんないきさつで誕生したんですか。
僕自身はもともと建築の勉強をしていたんです。美大卒業後にアトリエ系の建築設計事務所に就職し、先輩デザイナーのサポートで建築図面を描いたり、模型を作ったりしていました。
その後、グラフィックデザインの会社に転職したのが、ちょうどインターネット黎明期で新しい技術がいろいろ出てきた頃です。会社にもweb制作の部署ができたので、そこでwebデザインやコーディングを覚えて。
——新しい分野は開拓する楽しさがありますよね。
ええ。ただ人が受注してきた作業を続けていると、自分自身とは離れたところで仕事をしているようで物足りなくなってきたんです。もっと自分が責任を持つ仕事をしたいと思い始めて、3年くらいでフリーランスになりました。
「まめなり」という法人にしたのは、一人より何人かが関わって作り上げるほうがより良いものができると考えたからです。「Made in JAPAN」に信用があるように「Made in まめなり」というクオリティをチームで作りたかった。10年続けてきて、うまく形になってきていると思います。
——「まめなり」らしさというのは、どんなところにあるんでしょう。
デザインとして見映えが良いだけでなく、届けたい情報がちゃんとユーザーに届くサイトになっているか、そこを究めるのが「まめなり」らしさになっているんじゃないでしょうか。
デザインというのはアートではないと思うんです。アートなら自分が満足するものを自由に作ればいいんですが、デザインにはお客様がいて、その先に必ず情報を届けたいユーザーがいる。基本的にこのユーザー目線を大切にしないといけない。お客様の意図がユーザーにどう見えているか、いつも意識しています。
——だとすると、制作前のヒアリングはとても重要ですね。
お客様には必ず「サイトを使って何をしたいか」をお聞きします。ひと昔前だと「とりあえずサイトを作る」という目的でもよかったんですが、今はお金をかけるなら相応のメリットがなければムダになってしまう。
たとえばある店から「100万円でサイトを作りたい」というオーダーがあったら、お店にとってその投資が本当にプラスなのか一緒に検証します。
ひょっとしたら同じ金額を口コミサイトに投資したほうが売上につながるかもしれない。丸ごとオリジナルで制作しなくても、ブログサービスを活用したほうが安価で運用しやすいかもしれない。要望と状況をヒアリングして、お客様が本当にやりたいこととコストのバランスが取れる方法を探します。
——制作会社だけどサイト開設ありきではない、と。
そうです。もちろん、さらに投資してしっかり組み立てたほうがいいという判断もありますが、それは「何をしたいのか」を見極めてから初めてわかる答えなんです。
僕たちの目標は、お客様がwebを使ってやりたいことを手助けし、その先のユーザーも笑顔になれること。ベストな形は案件によって違うのでwebに関する心配ごとがあったら何でも相談してほしいですね。
——もし発注したら、どんな流れになるんでしょうか。「まめなり」の制作フローについて教えてください。
お問い合わせからヒアリング、納品までのスパンはだいたい3カ月くらいです。最初の1カ月にヒアリングから構成、次の1カ月にデザイン作業、次の1カ月でコーディングという感じです。
スマートフォンやタブレットでも表示できるレスポンシブ仕様や、ページ数が多いサイトだとコーディングに少し時間がかかります。
webデザインというのは見た目だけではなく、訴求したい内容を印象づける設計やユーザーの動線コントロールも含みます。「まめなり」は構成しながら効果的なデザインを並行して考え、確認を取ります。だから工程が進んでもリテイクがほとんどありません。
——平均的な予算はありますか。
最近はWordPressなどCMS(コンテンツマネジメントシステム)を導入する場合もあり、コンセプトから組み立てるなら250万円くらいが目安です。
でも先ほども述べたように、お客様によってめざす形は変わります。会社案内を転記するだけのサイトだったら、ブログや既存のホームページサービスを利用して、テンプレートのカスタマイズのみに絞って55万円くらいに抑えられる。これは250万円もかけなくていい。
逆に、サイト上で集客から購買まで完了させるならシステムから構築して動線をしっかり設計する必要があるので、その分コストがかかります。
——本当に「何をしたいか」によるんですね。
見た目だけのデザインなら、僕は誰でもできると思っているんです。行間や配置バランスはポイントを知っていればある程度整えられる。その先の業務としてデザインをやっていくとなると、相手が気づかない細かい部分や統一したいコンセプトを把握した上での表現が求められます。
「お客様が本当に求めている効果」をつかみ、その上で「まめなり」はお客様の目的を表現するプロとして細やかなところまでスキルを発揮できる。だから実際にお会いして深くお聞きするのは制作者として欠かせない工程なんです。
——「まめなり」の「まめ」は「こまめ」の意味ですね。
ええ。この言葉自体、古語で「まめ也、まめですよ」という意味です。誠実に仕事を進めていく姿勢を名前に込めました。音からは「豆」を連想できるので「芽吹く、成長する」という意味も入っています。
きちんと真面目に取り組むことで、誰かが喜んでくれたらいいなと。誰かが喜ぶと僕たちも嬉しい。やっぱりアートが目標ではないんですね。データなので手には残りませんが、使って価値が感じられる「用の美」や「民芸」のようなサイト制作をめざしています。
——これからはどんな「まめなり」にしていきたいですか。
オフィスを三鷹に移してから、地域との関わりを考えるようになりました。持っている情報はやはりインターネットを利用して拡散したほうが広がるのは確かです。webに親しむ人が増えるよう、技術的、人的にも積極的に地域の輪に加わっています。
業務でも制作して終わりではなく、サイトを磨いて継続的なフォローができる体制を整える予定です。今後は構成、デザイン、システムを含めて「まめなり」が理想とする世界観が作れるようにしたいと思います。