日本の未来は暗いけど、地域の未来は明るい?「TEPエネルギーセミナー『地域エネルギーとお金の未来』」

こんにちは!まめなり代表の上澤です。
かねてより興味のあった、地域とお金のセミナーがあると教えていただいたので、さっそく参加してきました!

8月24日(金)に行われた、TAMA EMPOWER(たまエンパワー株式会社)主催の「TEPエネルギーセミナー『地域エネルギーとお金の未来』」に参加してきました。
ゲストに龍谷大学教授の深尾昌峰氏、コーディネーターに水上貴央氏を迎えての地域エネルギーとお金に関するセミナーでした。

とても学びの多いセミナーでした。
水上さんが第2部のセッションの後半で話していた「近代の造り直し」というワードは響くものがありました。
これからの日本、そして地域はどのように少子高齢化の波を乗りこなしていくのか?その一つの解答が今回のセミナーにあった気がします。

もくじ

第一部は深尾さんによる「地域エネルギーとファイナンス」

これからの少子高齢化の問題をどう捉えていくかといった内容でした。
課題先進国と呼ばれる日本。これまでは様々な国の体験を元とした前例があってのことでしたが、これからはほかの国が経験したことのない変化の波に飲み込まれていくわけです。
つき進む少子高齢社会をどう考え、どう対応していくのか?

”モデルなき時代 ポスト「近代」=自治モデルの模索”

人口が減少するという世界的に今までにないことをネガティブにとらえるのでなく、チャンスととらえ、様々な取り組みを試すことが出来るのではないだろうか?

ESG投資サスティナビリティといったキーワード。
地域に投資する動きも出てくる。

信用金庫の預貸率は現在50%と低くその資金は国債の購入などに回っている。
しかし、地域への投資をするべきという動きも出てきている。
深尾さんの呼びかけて、複数の信用金庫がそういった動きを模索している。だが、みんな2番がいいというらしい。
一番初めにやる方がインパクトも大きいし、目に見えない利益も得られると思うのだけど、目に見えるリスクの方が優先されてしまうらしい。もったいない。

また、コミュニティ財団や、地域の持続性を高める事業への投資ファンドなどの活動も。

深尾さんはそういった地域のお金の中心にエネルギーがあるのではないかと言っていた。この話は第2部の地域通貨のエネルギー本位制の話につながる。

社会的投資×地域のプロトタイプを作る。

「廃棄物の適正処理」の話がとても印象に残った。
廃棄物の適正処理を進んで考えているのが産廃業者だというのだ。
なぜそのような考えに至ったのか?
深尾さんは実際に処理場に行きどういった経緯なのか確認したそうだ。
処理現場には消費されなかった食品などが、直接製造場所から運ばれてくるというのだ。
生産されるものの、その時の売れ行きや様々な要因で、流通にすらのらずにそのまま廃棄されるものがある。
産廃事業者の中にもそういった現状に疑問を持ち、産業廃棄物の適正処理を考える方たちもいる。しかし、そのまま産廃として処理する方が、企業としての利益は確保できる。そうなってくると銀行としては売り上げが落ちるのであろう活動に融資は出来ない。ならば、社会的な意義をもつ活動に、社会的投資を行うような流れを作るのがいい。
そういった活動を支援することで「社会的投資×地域」の成功事例をつくり、流れを加速することが出来る。

第一部のまとめ

いま、地域とエネルギー、お金を取り巻く環境は変化の時を迎えているのかもしれない。深尾さんはそれを「相転移」と表現していました。
環境によって物質の様が変わることを表す言葉だが、いまいちとらえきれなかった。お金の性質が変わるということの表現だろうか?
またお話を聞く事が出来たら詳しく聞いてみたいです。

パラダイムシフトとまではいかないのかもしれないが、地域に関する価値観も大きな変化を迎えて、この先ますます重要になってくるのだろうと考えさせられました。
そして、その中で自分はいったい何ができるのか?
今まで世界的に経験した国のない、人口減少はもはや変えることはできない。その変化を前向きにとらえ、子供たちの未来にどうバトンを渡せるのか?とても考えさせられました。
もっとエネルギーの話もしていたのだけど、もともとあまり興味がなかったこともあり、いまいち拾いきれなかった。反省。

第2部は深尾さんと水上さんのセッショントーク「再生可能エネルギーと信用経済で持続可能な地域を創ることは可能か」

二部は水上さんが進行しながら深尾さんとトークをしていく流れ。そういえば信用経済の話はなかったような気もする?
とはいえ内容は多岐に渡りとても勉強になるトーク内容でした。

社会的投資を行うようなマインドになるためには?

その社会的投資を「自分事」としてとらえられるか?が大切になってくる。
子育て世代が待機児童問題で苦しむ中、当事者であれば保育園建設に投資を行うことはそこまで遠い話ではない。しかし、その問題に直接かかわりがなければ投資対象にならないかもしれない。

そうなると「ストーリー」が重要になってくる。
周りの人を巻き込むためには、その投資にどのような価値があり、利回りだけでない利益がそこに生まれることをアピールしなければならない。

そこで必要になってくるのが、深尾さんの言う「アンプ」や「スピーカー」の役割を担う組織や個人になってくるのだろう。
いま、自分が地域でやりたいと思っていることも、このアンプやスピーカーになり得る活動なのかもしれない。

「制度で変える」か「考え方を変える」か?

社会を変えるための方法として、「制度で社会を変えていくのか?」と「考え方を啓蒙して変えていくのか?」という問いかけが水上さんからあった。
会場では半々だっただろうか?
それぞれ、会場の方にも意見を聞いたが確かになという内容だった。

深尾さんは「両輪として二つとも必要。」とおっしゃっていた。
事象には段階があり、個々人の小さな気づきから問題は認識されだす。それが発展していくことにより、制度として整備されていく。

例えばDVなどは昔は認識されていなかった。
被害者の方々の気づきや訴えから社会に認知されるようになり、法律として防止する制度を作り上げるに至った。

「個人の気づきは制度の種」
個人の考え方を育てていくことは、様々な認識を生み、制度として整備されていくのだろう。

また、ジェネレーションZと呼ばれる一般に1990年代後半から2000年代生まれの若者の方が社会的な意識は高いようだ。
世界的にはその世代が多数を占めていくが日本は高齢化の影響で、マイノリティのママになってしまうのではないか?そうした意味でも日本はガラパゴスになってしまう。世界とのギャップがここでも起こってしまう可能性があると、水上さんがおっしゃっていた。

そうなると、若い世代より、自分も含めた世代の教育というのも大切になってくるのかもしれない。

地域に新しい経済圏を

ソーシャルと経済は切り離せない。
本気で社会を変えようとしたらお金を別に考えることはできない。
と、深尾さんはおっしゃっていた。
全くその通りだと思う。地域で活動することをきれいごとにしてしまうと一過性のものになってしまう。特に無償ボランティア。無償で奉仕することはとてもいいことだけれど、それを他者に求めてはいけない。無償でやる場合は個々人の裁量のもとに行うべきだ。というのは自分の考えです。

この先の日本経済の先行きはあまり明るくないのではないかという、水上さん。
そのために何ができるのか?
そこで、『近代の造り直し』というワードが出てきた。
幕末から明治維新にかけて、日本の経済は混乱を極めたらしい。しかし、庶民の生活は実はそこまで混乱しなかったそうだ。
生活通貨は幕府のお金とは別に、藩札と呼ばれる藩独自の通貨で成り立っていた。
そのおかげで、そこまで混乱しなかったらしい。
この辺、興味が沸いたので後ほど調べてみたい。

「地域に新しい経済圏を作る」
日本の破綻に備えてというわけではないが、地域ごとにみんなで支えあう経済圏を作るのは魅力的だ。

円とは独立した価値基準を持たせることで、円の変動に左右されない通貨になる。その基準として「エネルギー本位」というのが考えられるのでは?と深尾さんはおっしゃっていた。
地域エネルギーを通過の基準にするのは確かに面白い。
都市と地方をエネルギーのやり取りで結ぶこともできる。
現在も同じように発電所は地方にあるが、その消費の大部分は都市部で行われる。その負担を分かりやすく地域に落とすこともできるのかもしれない。

使える場所と通貨のルールをきちんと設ければそこまで難しくないのかもしれない。
使う場所は地域であるならその自治体に収める税は地域通貨で納めることが出来るなどであれば、必ず使える場所が確保できる。
ルールとして長期に保有すると目減りするなども受けれるとお金の流通を促すことが出来る。通貨は血液にも例えられるように、めぐってなんぼだ。

様々な地域で地域通貨の動きは出てきているらしい。ブロックチェーンや仮想通貨のながれでこの分野は結構盛り上がってきている感じもある。
お話の中で「西粟倉」が上がっていた。
面白そうなので、こちらも追っていけるようにしたい。

その後、懇親会もあったのだが、都合で不参加。
名刺交換だけさせてもらったので、何かの際はお話をお伺い出来たらとてもうれしいです。

セミナーに参加して

日本自体は経済の破綻の可能性や、少子高齢化と様々な困難が山積みになっているのかもしれないです。しかし、その解決や緩和に関して地域の果たせる可能性はまだまだあるのではないかと感じられました。

まだ、あまり形になっていない、自分の関わっているプロジェクトも、実はかなり価値の高い活動なのかもしれない。と、ちょっとだけ後押しをしてもらった気分になれました。それだけでも参加してよかった!

そして感謝。
元々、地域活動が無償ボランティアで賄われることに疑問があり、経済活動の一端として地域活動を行うことが出来ないか?と思っており、地域とお金に関して興味を持っていました。
それを覚えていてくれた山田さんからこのセミナーをシェアしてもらったのが参加のきっかけです。
そういった一人一人の興味などをきちんと覚えていてくれるということは、すごいことだなと、ちょっと感動します。
自分もそういった気遣いができるようになりたいです。

そういった気遣いなども地域というコミュニティの良さなのかもしれないです。
地域に根差し、自分や自分の家族のためにも、よりよい環境にできるように頑張りたい。そう思えるいいセミナーでした。

上澤進介
1999年多摩美術大学美術学部建築学科を卒業後、設計事務所、デザイン事務所をへて、2005年4月フリーランス(屋号「くりぬき」)として独立。2008年6月3日、株式会社まめなり設立。現在に至る。 二児の父。地域活動に関心をもちコミュニティ活動に関わる方々と学びを深めている。